
はじめに
ストロボを使った撮影は、光を自在にコントロールできるという点で、写真表現の幅を一気に広げてくれます。中でも「Godox V860III S」は、コストパフォーマンスと性能のバランスが優れたソニー用ストロボとして、特に人気の高いモデルです。
私自身もポートレートや商品撮影をメインにしているため、強力なTTL対応ストロボを探していました。純正品は高価すぎる中、このV860III Sは性能・価格ともに魅力的だったので導入を決めました。
この記事では、実際に使ってみた率直な感想を含めて、「買いかどうか」を深掘りしていきます。
Godox V860III Sのスペック概要

まずはスペックから確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
対応カメラ | SONYマウント(マルチインターフェース) |
ガイドナンバー | GN60(ISO100・200mm) |
発光モード | TTL / マニュアル / マルチ |
電源 | 専用リチウムイオンバッテリー(VB26A) |
リサイクルタイム | 約1.5秒(フル発光時) |
フル発光回数 | 約480回(満充電時) |
モデリングライト | 搭載(2W LED) |
ワイヤレス | Godox Xシステム対応(2.4GHz) |
サイズ・重量 | 約76×93×197mm・530g |
価格はおおよそ3万円台後半~4万円台前半。SONY純正の「HVL-F60RM」などに比べると、半額以下で似たようなスペックを手に入れられるのが魅力です。
V860III Sの特徴と進化ポイント
このモデルは、先代のV860IIからいくつかの点で進化しています。
① モデリングライトの搭載
V860IIIから新たに搭載されたのが、2WのLEDモデリングライト。被写体への光の当たり方を事前に確認できるので、特にスタジオ撮影や暗所での撮影に便利です。
② クイックスイッチ(TTL⇔M切り替え)
サイドの物理スイッチでTTLとマニュアル発光を瞬時に切り替え可能。現場で瞬時に対応できるのがありがたいです。
③ 高性能バッテリー「VB26A」
前モデルよりもバッテリー性能がアップし、フル発光で約480回も撮影可能。USB-C充電対応もポイント。
④ リサイクルタイムの短縮
1.5秒(フル発光)という高速リサイクルタイムで、テンポの速い撮影にも対応できます。
実際の使用感レビュー

操作性とインターフェース
UIは一見複雑に見えますが、慣れてしまえば直感的。物理ボタンが多く、設定の変更もスムーズです。LCDも見やすく、日中屋外でも確認しやすいのは好印象。
TTLの精度とマニュアル発光
TTLはSONY純正と比べても遜色なく、被写体に応じた適正露出を自動で出してくれます。マニュアルモードでは1/1〜1/128の範囲で1/3段階ずつの調整が可能。ライティングにこだわる撮影者にも十分応えられる精度です。
実写でのリサイクルタイム
連写で撮影しても、テンポよくチャージされて発光ミスがほとんどありませんでした。1.5秒の公称値は伊達ではなく、実用レベルで非常に優秀です。
屋外撮影での使い勝手
昼間の逆光撮影でも、ハイスピードシンクロ(HSS)を使えば背景を飛ばさずにしっかり人物を照らせます。HSS最大1/8000秒対応なので、明るい屋外でも安心です。
Godoxならではのエコシステム
Godox V860III Sの最大の魅力は「Godox Xシステム」に対応していることです。
このシステムを使えば、Godox製の他のフラッシュ(AD200ProやV1など)とワイヤレス連携が可能。1台のトリガー(XPro-Sなど)で複数台をコントロールできます。
たとえば、V860IIIをキーライト、AD200Proをリムライトに使うなど、ライティングの幅が大きく広がります。ストロボ初心者でも拡張しやすいのがGodoxの強みですね。
気になるポイント・デメリット
もちろん完璧な製品ではありません。以下の点には注意が必要です。
- やや大きく重め(530g):αシリーズなどの小型ボディとのバランスはやや悪い
- UIのクセ:最初は設定項目が多く戸惑う
- ファームウェア更新がPC必須:Macユーザーはやや不便
とはいえ、いずれも使いこなしていくうちに慣れるレベルです。
他社製品・旧モデルとの比較|迷ったらここをチェック!
■ Godox V860IIとの比較(旧モデルユーザー向け)
旧モデル「V860II S」との大きな違いは以下の4点です:
比較項目 | V860II S | V860III S |
モデリングライト | なし | あり(2W LED) |
TTL/マニュアル切替 | メニュー操作 | 側面スイッチで即切替 |
リサイクルタイム | 約1.8秒 | 約1.5秒(やや短縮) |
バッテリー | VB18 | VB26A(新型・互換性なし) |
特に便利なのが「TTL⇔マニュアル切り替えスイッチ」。従来はメニューを経由する手間がありましたが、V860IIIではワンタッチで変更でき、撮影現場でのストレスが激減します。
バッテリーも新型「VB26A」に刷新され、より安定した電力供給と高速リチャージが実現。旧モデルとの互換性がない点だけ注意ですが、実用面では明確なアップグレードです。
結論:
すでにV860IIを持っていて大きな不満がない人は急いで買い替える必要はありませんが、「多灯ライティングを本格化したい」「より快適な操作性が欲しい」人には、確実に買い替える価値ありです。
■ 他社製品との比較(SONY純正・Neewerなど)
ソニー機で使えるストロボには、他にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
製品名 | 特徴 | 向いている人 | 価格 |
Godox V860III S | 高コスパ、Xシステム、TTL/HSS、バッテリー式 | 拡張性と性能を重視する中~上級者 | 約38,000円 |
SONY HVL-F60RM2 | 純正ならではの完全互換、高信頼性、光量大 | プロ用途、信頼性最重視 | 約60,000~65,000円 |
Neewer NW880S | 超低価格、TTL/HSS対応、構造は簡易 | 入門・お試しで使いたい人 | 約15,000円 |
Godox V1 S | ラウンドヘッド、より自然な光質、X対応 | ポートレート中心の人、質感重視 | 約46,000円 |
◯ SONY HVL-F60RM2との比較
純正ストロボの最大の利点は、ソニーの最新ボディとの完全な互換性と安定動作。特に連写時やAF補助光の挙動、カスタムボタン連携など細部での親和性は高く、業務で使うプロには選ばれやすい製品です。
しかしその分価格は高く、重量もあります。コスパを考えるとV860IIIの方が断然優秀です。
◯ Neewer NW880Sとの比較
Neewer製品はとにかく価格が魅力。しかし発光精度やチャージ時間、UIなど細かな使い勝手に差があります。たまに使う程度の人には十分ですが、日常的に使うならGodoxの方が安心感あり。
◯ Godox V1 Sとの比較
V1 SはV860IIIの兄弟的存在。最大の違いは「発光ヘッドの形状」。V1は円形のラウンドヘッドを採用しており、自然で柔らかい光を出せるのが特長。バウンス撮影に向いており、ポートレート中心ならこちらの方が満足度は高いかもしれません。
ただし価格はやや高めで、光量自体はV860IIIと同等。モデリングライトやXシステム対応は共通です。
まとめ:比較して見えてくるV860III Sの「ちょうどいいポジション」
- 旧モデルV860II → コスパは良いが操作性や拡張性でやや劣る
- SONY純正品 → 高品質・高信頼性だが価格がネック
- Neewerなどの激安中華 → 安いが性能はそれなり
- V1 S → より光質重視なら選択肢に入る
その中で V860III Sは「バランスの良さ」が際立っています。
- TTL・HSS・多灯・バッテリー・ワイヤレス
- 操作性も高く、拡張性あり
- コストは抑えめ
初めての本格ストロボにも、ステップアップしたい中級者にもおすすめできる、まさに「定番機」と言える1台です。